先日、GMOのFX被害から中小経営者や個人が学べることという記事を書いたが、今回はこういう出来事から株売買の際の判断基準を磨けないかについて考えてみた。
公開情報を使った株選びに関心のある方は公開情報から分かる会社の体質から読んでも理解できるようになっているが、営業体質のいけいけの会社の株は買わないほうがいい?から読んだほうが立体的に読めると思う。
営業体質のいけいけの会社の株は買わないほうがいい?
これはよくあることだが、売上拡大や成長を急ぐいけいけの会社は管理体制など脇が甘くなる。楽天モバイルなんかがいい例だろう。そういう会社は悪意に狙われやすく、次から次へいろいろな良からぬ問題が起こる。吸引力が強く善悪を問わず色々なものを引き寄せてしまう。こういう事情は山本周五郎賞を受賞した佐藤究著の『テスカトリポカ』なんかを読むと、よく分かる。
楽天モバイルの例とは、例えば数年前にあった楽天モバイル元物流管理部長に何十億もの損害を与えられた件とか、去年あった14〜16歳の男子中高生3人が他人の楽天IDへ不正ログインして楽天モバイルの通信回線を契約した件などを指す。関心のある方は以下を参照ください。
日経の記事
個人としては利用しようとする会社のサービスがそういういけいけな会社なのかは事前に調べておきたいし、経営者としては自社がいけいけどんどんで前のめりになって転ばないよう注意したいところだ。
ある組織のリーダーが営業体質でいけいけの場合、周りに集まる人も似たような人が集まり、それがその組織の本質となる。これは一度そうなるとなかなか変わらないし、変わりようがない。売上をもってくる派手な仕事をする人ばかりが評価され、そうでない人は昇進・昇給の機会が少ない。その結果ITセキュリティのような地味な業務はその会社で見向きもされなくなる。
いけいけで会社を大きくしてきたリーダータイプの人たちの心の中で起きていることは、会社を大きくしようという意志とそれに伴う弊害(例:世間で叩かれる、利用者に迷惑をかける)が気にならない心とが矛盾なく同居していることだと私は見ている。
世間の大抵の経営者は自分が原因で情報漏洩が起きたりすると、正常性バイアスが働いて自己正当化したり、または会社の規模拡大の手を止めたりするけど、三木谷さんとか熊谷さんのように構わず突き進む人はそうならない。余談だがイーロン・マスク氏とか故ジョブス氏なんかもそう。こういうサイコパス的な人物は自身の目的に邁進する傾向が強い。
ちなみにそういう人がいいとか悪いの判断はここではしていない。そういう人は世の中に一定数いるということを知っておくのは大事だと言いたい。
さて、楽天モバイルもGMOグループも少なくとも経営者が交代しない限り、これからもイケイケであり続けると思う。こういうような経営者や会社の傾向を把握しておくのは株売買の参考になると思う。
売買目的有価証券は安いときに買って高く売るのが基本だ。株取引をする人にとっては、いけいけの会社は業績がいいときはCMなどをバンバン流して外目には派手に映るから株を買っておこうと思うかもしれない。
または、今GMOの株価は下がっているから、長期でみるといずれ上がることを見越して今のうちに買うのはありだと思う人もいるかもしれない。しかし本質的にイケイケで脇があまいということは、問題が繰り返し起こりやすいことを意味する。
そういう会社が後付けで体裁を整えるために、いかに「弊社は地球環境に配慮し云々」とか「女性に働きやすい職場で〜」とか企業理念などで表現しようと、それは表面的なことでしかない。それが本当に実行できているならいいが、そんなこと外からは分からないし、イケイケ会社の後付け理念は現実には何の役にも立たない絵にかいた餅だ。
私なら熊谷さんがトップにいる限り、GMOグループの株は買わない。
公開情報から分かる会社の体質
熊谷さんとか三木谷さんのようなメディアに出る分かりやすい経営者ならいいが、そういう会社はむしろ少ない。これでは株を買う判断材料がなくて困ってしまう。
そこで活用するのが公開情報だ。
そもそも公開情報とは何か。株に役立つ公開情報を思いつく限りかたっぱしから列挙してみる。例えば、その会社の公式ウェブサイト、社長や社員のブログ、中の人の発信するSNS、公開セミナーでの社長の発言、会社の所在地、会社の製品やサービス、従業員の年齢別や性別の構成比率、新聞記事、離職率、人材募集情報、その会社の社長や社員のいつもの服装、出社時間と退社時間、上場会社なら公開されている財務諸表、どんな資産を持っているかなどいくらでも挙げられよう。
つまり、一般に公開されていること全般だ。見ようと思えば誰でも見える情報、それが公開情報だ。関心がなければ何の意味もない情報でも、意図をもって観察すると意味のある情報になる。
公開情報を使って情報分析することを専門用語でオシントという。一般にある組織の内部の情報なんてものはそうそう出てこない。株でそんなことすればインサイダーとなる。だから公開情報で分析する。
ここで一つ、歴史から公開情報を活用して情報分析をした事例を挙げることにしよう。
太平洋戦争で、アメリカは太平洋を挟んで日本と対峙することになった。そして日本人の行動に戸惑った。その狼狽ぶりはルース・ベネディクトの『菊と刀』を読めばよく分かる。以下は講談社学術文庫p11より抜粋だ。
西洋諸国が人間の本性に属することがらとして承認するにいたった戦時慣例は、明らかに日本人の眼中には存在しなかった。このために太平洋における戦争は、島から島へ一連の上陸作戦を決行するだけ、軍隊輸送・設営・補給に関する容易ならぬ問題を解くだけでなく、敵の性情を知ることが主要な問題になった。われわれは、敵の行動に対処するために、敵の行動を理解せねばならなかった。
つまり、西洋人にとって日本人とは「こいつら何なの、わけわからん」という存在だった。菊を愛でるかと思えば、刀で首をきったり腹切りをする。こんな二面性のある奴らなんなの?意味わからん、となった。
だからルース・ベネディクトのような学者が文化人類学の手法で日本人を徹底研究した。古事記や日本書紀、日本の歴史、宗教観など様々な資料を読み込んで、日本人がどういう行動様式なのか、どういう思考をするのかを把握した。ちなみにルース・ベネディクトは日本に一度も来ることなく『菊と刀』を書き上げた。公開情報分析のお手本である。
「彼を知り、己を知れば百戦して危うからず」:孫子
フェラーリに乗ってる経営者はダメか
例えばIndeedのような人材募集サイトで目当ての会社の人材募集を探してみよう。例えば、営業職の方がITセキュリティー人材より著しく待遇が良ければそれでイケイケ会社の可能性がある。絶対ではないがそう読み取れるかもしれない。ITセキュリティ担当のような人材の人件費が安い場合、会社にとってはただの費用でしかないという経営者の無意識がそこに反映されているように見える。
ここから、管理体制の甘い会社の可能性があると読み取れる。
いっぽう、経営者が簿記2級を持ってるとか、稲盛和夫さんの『実学』のような本を愛読してその精神を経営に反映していると公言しているなら、会計に哲学があり経営にもそれを実行している可能性があると読める。
フェラーリに乗ってる経営者は浪費家なダメ経営者だろうか?
これは一概には言えない。仮に派手な人でも「フェラーリに乗る経営者」というイメージが一般に認知されればそれは広告塔として宣伝効果があり、もしそれでフェラーリの維持費をペイできているなら問題ない。貸借対照表などの最終的な会社の業績や財務にどう表れているかが大事なので、経営者がフェラーリに乗っているという公開情報だけではその会社の株を買うかどうかの判断はできない。
こういった公開情報による分析ができれば、あなたの株選びがちょっと違って見えてくるはずだ。
